フレッシャーズオープン振り返り前編(準備~予選4Rまで)

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少しだけですが、第4回フレッシャーズオープンの本大会で使用した問題に言及しています。今後当該大会の記録問題集で早押しクイズをする可能性がある人は、それまで読まない方がいいかもしれません。

また、記録集については既にboothとクイズ宅急便からお求めできるようです。意欲的な問題群であるため、ぜひご覧ください。

booth.pm

 

【始動】

 

2022年1月23日、自分の所属するワンダーネットは3勝5敗でAQL1次リーグを戦い終えた。その時から、「次のターゲットはフレッシャーズオープンだな」とおぼろげながらに思い始めていた。

 

初めて早押しボタンを触ってから2年数カ月、ワンダーネットにスカウトされ、本格的に競技者としてクイズを始めてから1年で、AQL全国大会進出。クイズプレーヤーとして贅沢な経験をさせてもらった一方、「個人戦でも活躍したい」という欲求が自然と芽生えた。

そこで、昨年も出場していたフレッシャーズオープンに照準を合わせ、そこで最大のパフォーマンスを出せるように、逆算してクイズを行うようになった。(とはいえ、本格的に準備を始めたのは4月ぐらいからだった)

なお昨年のフレッシャーズオープンの結果は準決勝1stステップ敗退。負け方としても悔しさの残る敗退であり、それを踏まえると当然今年の目標は「決勝進出」だ。

 

【基礎づくり】

前回大会で見た決勝の様子や、自分の周りの参加資格者を見る限り(本当は見るまでもないのだが)、クイズ暦の浅い自分は指勝負に参加できる問題が少ない。「あっ、この問題指勝負の問題だったんだ」と後から気づくこともしばしば。

一方で、AQLでの経験から、「先読みや連想を周りより速く回して先にボタンを押す」というスキルに長けている自信があった(あらためてあの大会で得た経験値は計り知れない)。

そのため、「参加できる問題数を増やす」ことを念頭に、基本問題の充実を、知識ベース、問題文ベース双方で進めていった。具体的には「abc過去問をランダム100問表示し、自分が持たない知識や、クイズの問題文としての聞かれ方をメモする」を繰り返した。

qss.quiz-island.site

早押し力の向上面では、「易問の押し合いを念頭においた早押し技術」の習得に難儀した。チーム戦、とりわけ自作問で戦う上に誤答リスクの高いAQLでは、反射神経に頼った押しはあまり要求されない。しかし、個人戦、しかも誤答がある程度許容できるシチュエーションでの試合においては、反射神経を活用した戦いをしなくてはならない。それどころか、「ここの辺りで確定情報が出るだろう」といった決め打ちの押しを使うことすらある。

AQLでは左脳的な押しを武器に戦ってきた。個人戦では右脳的な押しをしないとボタンは点かない(この右脳、左脳の認識は正確ではない、多分間違っている)。そこへのアジャストは本当に苦労した。何なら大会が終わった今でも対応が済んだとは思っていない。

 

そのように必要なスキルの向上にいそしみつつ、ゴールデンウィークには、道内大会でフレッシャーズオープンの参加レギュに近い「ネクストブレイク杯」に参加した。決勝進出で自信と弾みになったが、一方で決勝で早押し力に関する前述の課題(とりわけ、反応すべき指問題の見極め力不足)が再度露呈した。収穫と課題を持ち帰れた良い大会だった。

 

【準備】

フレッシャーズオープン本番が近づき、基礎能力の向上だけでなく、より大会に特化した準備を始めた。

今年の第4回大会は、第3回までと主催者が替わっており、これまでの大会使用問題から傾向が変わるかもしれない。大会ホームページで例題を見た時も「本番もこんな風にエンタメ問題が並んだらキツいな」と思った。それでも、「誰が作るにしてもこれまでのフレッシャーズオープンの問題傾向を踏襲するはずだ」と見込んで、フレッシャーズオープンの過去の問題と代表のちぃさんが過去に出した問題集に目を通して、少しでも傾向を掴もうと試みた。

時事問題については自分自身でももちろんリサーチしたが、チームメイトをはじめ周囲の人が作問した時事問題を積極的に吸収した。時事対策は一人でやっても効果が薄い、多くの人が持ち寄ることで効果が何倍にも膨れ上がると実感した。なお、5月下旬からは時事問題の収集をストップした。使用問題もおおむね出揃っているだろう、これ以降の時事は作問されないと踏んだからだ。

予選ルールへの対応。7〇3×はさておき、短期決戦色の濃いルールを大人数で行う2R、3Rに対しては、自分の苦手意識込みで最大限の警戒をしていた。ありがたいことに大会直前はチーム練習でも予選ルール準拠のルールで押させていただいたり、直前対策企画を打っていただいたり、本番前日に名古屋に飛んで参加したワンダーネットのオフライン会では連答付き4〇2×をひたすら繰り返す時間を作っていただけた。その日は非常に豪華な参加メンバーの中、一度も失格せずに何度か勝ち抜けできたことで本番に向けた自信が増した。その時の自分の記録を付けたルーズルーフは当日お守りにしていた。

 

準備を終えて自分の実力をあらためて分析した。基礎知識についてはフレッシャーズオープンを戦い抜けるだけの質、量を確保した(ことにした)。早押しスキルについては、右脳的な押し(頻出問題への反射神経)は平均レベルだが、左脳的な押し(先読みと連想)では周りに有利を取れる。ルールへの対応は、この1年間での大会出場経験がそのまま武器になるだろう。本番の緊張への対応は、直近のネクストブレイク杯でうまく制御できた記憶が新しく、上手くやれるだろうと思っていた。

 

平均レベルまで押し上げた基礎力の上に、「左脳的な押し」「対策した時事問題」「本番力」を武器にして戦う。そんなコンセプトのもと大会当日を迎えた。

 

【予選1R:ペーパー】

かねてより、普段早押しで競っている人とペーパーで競うと、早押しの時よりも往々にして手ごたえがなかった。素点がそのままドライバーズポイントになるとはいえ、ペーパー自体の対策はせずに上がったはずの基礎力で何とか戦おうと試みた。

ネクストブレイク杯で「前の天皇誕生日」を聞かれて「現在の天皇誕生日」を答えるというミスをやらかしているので、凡ミスだけはするまいと思っていたが、TOEICのリーディング、リスニングの「各」最高点を聞く問題で990点と答えるミスを犯す。

「詰碁」は適当に書いたら当たった。難易度順に出題順が並んでいないというアナウンスがあったことから「とりあえず書いてみるもんだ」的な問題はどこかで来ると思っていたので、その通りトライしてよかった。

 

結果、50点中30点。平均よりはわずかに上、トップとは9点差。結果論だけど仮に4Rでトップの人と直接対決して順位で上回ったとしてもDPで捲れない点差が付いているわけで、決勝を目指すにはあまりに心許ない点数である。

 

【予選2R:3〇2×】

自分は1組目に参加。ペーパー集計前であり、あらかじめ完全ランダムで組まれた対戦カードで行う短期決戦であり、交通事故が起こりやすいラウンドと気を引き締めてかかっていた。

過去問から、初っ端「フレッシュ」問題が来るだろうとは思っていたが、何に当たりを付ければいいのかさっぱり思いつかなかったので思考をニュートラルに。「分からなかったけどフレッシュ問題が来た」ということで正解を取られるもメンタル的には好材料に。

続く2問目「さかまた」と聞いてシャチと答える問題を取って無事に始動することができた。余談だが、どちらかといえば右脳で押して取れたことは予選の間しばらく自身に繋がった。数問後、勢いそのまま「ステフェン・カリー」を聞いてスリーポイントシュートを答えて2〇目。

3〇目は100%の確信は無かったものの、得点差と勢いに乗じて「キャラバン」を答えて勝利。しっかり攻めて勝ち抜けられた、という経験もいい材料になった。

その後は40問読み切るまで手持ち無沙汰になったり、問読みさんの英語の流暢さに驚いたりしていた。

あと、2組目の1問目も「フレッシュ」問題であったことを聞き逃さなかった。

 

結果:1位(3〇0×)

 

【予選3R:連答付き4〇2×】

自分は2組目に参加。ペーパーの結果による組み分けで、顔見知りや名前を知っている人達と対戦することになり、自分のペーパーの出来について何かを察しつつ3R開始。このルールは昨日、えぐい面子で散々やったんだ。大丈夫。

1組目観戦中、1問目が「スタート」問題であることを観測。前ラウンドの様子から、1組目1問目が「スタート」問題なら2組目1問目も「スタート」問題でほぼほぼ間違いない、という確信をもって席についた。

その1問目、予測した分速く押せて「スタンディングスタート」を取り、狙い通りの先制に成功。連答権持ちの人は立ち上がる決まりのため、文字通り立って試合を始めることとなり、そういう意味でも「うまくできた問題だ」と正解後に思った。

(なお、希望的に予測していた問題はこんなもの。「『StaRt』『インフェルノ』などの代表曲がある、今年再始動したバンドは何でしょう?」→Mrs. GREEN APPLE。大外れである。)

 

しかしその後は獲得した連答権を活かすことができず、また2Rほど有利なポイント進行にもならず、気づけば他にもリーチ者がいる状態で3〇1×。1位にこだわるか、無理せずアベレージを取りに行くか……?

結果的には「攻めた」。「ポリティカルコレクトネスに配慮して今シーズンから使用/」でガーディアンズを答えて正解を取った。

「出来るならまだ押さない方がいい」タイミングだったと今でも思っている。にもかかわらず押しに行った理由は三つある。

一つ目は先述した、前日のワンダーネットでの実践練習。まったく同じルールで非常に強い人達と戦っていたため、自分の押しも強いものとなった。

もう一つは、「自分との相性が非常に良さそうだった」こと。自分自身も以前「ポリティカルコレクトネスに配慮して~」という前フリの問題を作ったことがあって、それゆえにこの問題は自分がシンクロしやすい構文だと思った。作問経験が解答者側で活きるという現象については後編でも触れようと思う。

そして三つ目、予選全勝で1位通過したイチスケ選手が、2,3Rで自分の裏の組でトップ抜けしたのを見ていたこと。もともと顔見知り(会ったのは当日が初だけど)の実力者で、ここまで同室かつ別の組であることからお互い応援し合っていた。2Rでは先に自分が勝ち抜け、あとからイチスケ選手が勝ち抜け。そしてこの3Rでは向こうが先に1位抜け。意趣返しされたような形となり、これは応えなくてはという考えが頭にあったのは確か。それを抜きにしても、決勝に上がる選手の押し、勝ち方とはこのレベルなのかと大きく刺激を受け、自分も決勝に上がれる戦いを意識することとなり、その結果の攻めた「ガーディアンズ」だった。

 

結果:1位(4〇1×)

 

【予選4R:7〇3×】

開幕前の自分の見立てでは、予選2,3Rで取りこぼした分の失点をここで挽回するプランだったのだけど、嬉しい誤算の2連続1位抜け。こうなってくると皮算用が顔を出す。

決勝進出ストレート枠9人に対して、2Rと3Rで連続1位を取れる人数は、最大6人。組み合わせや問題相性等々を加味するともう少し少ないはず。

となると、このラウンドの立ち回りは「1位を取りに行って1位が取れれば文句なしだが、2着でも十分にチャンスは残るので、1位だけにこだわる必要はない」となってしまった。これがこのあとのプレイングにケチが付く原因である。

 

試合開始。ちなみに自分はまた2組目で、1組目第1問が「はじめ」問題だったのでまた狙おうとしたが反応できず。というかしっかり反応できた正解者さんが上手だった。

(ヤマを張っていたのはこんなもの。「剣道の試合開始の合図は「はじめ」ですが、フェンシングの試合開始の合図は何という掛け声でしょう?」→アレ。これも大外れ)

続く2問目はまさかの自作被りであるにも関わらず押し負けるという体たらく。イマイチな流れを醸成してしまう。その後も、取れそうな匂いの強い問題を逃し歯がゆい思いをしながら、それでも正解を重ねて6〇到達。自分ともう一人が6〇0×で並ぶシチュエーション。ほかの選手は2〇前後で並んでいたはず(記憶曖昧)。

ここは1位取りに攻めてもいい場面ではあるが、攻め方がまずかった。顛末を先に言うと2連続誤答。2回目の誤答には自分でも文句は無い。「標高が非常に近くてクイズ的に紛らわしい山が二つある」という新しい知識に触れた上での誤答であり、戦術的にも技術的にも意味のある誤答だからだ。問題はその前。「自分は分からないけど相手が分かる問題だったらどうしよう」という曖昧な思考のもとで無理押しをしてしまった(一応、それまでの回答傾向からして危なそうなジャンルではあった)。それは形の上では攻めているものの、結果としては攻め「させられている」わけであって、行動としては負け筋のそれである。

6〇2×となった、その後の対応。最初に書いた通り、「2着でもチャンスは十分」という皮算用のもとこのラウンドに臨んでいた。また、リーチ者が二人、周りもある程度正解や誤答が出ていて、スルーも少なくなかったという状況。

良いところが殆ど出なかったラウンドであるが、ここで「完全閉店(確信を持ったスルー押し以外押さない)を決め込んで40問が過ぎ去るのを待つ」作戦に即座に切り替えられたことは(当然といえば当然ではあるが)好プレーであったと言いたい。「残りの問題数で、6〇まで押し上げてくる選手がいない」ことに賭け、その賭けに殉じたことも。

ただ、事実上触る権利を失った問題を聞いているときの不安と悔しさは今でも割と生々しく覚えている。

 

結果:2位(6〇2×)

 

 

予選2~4ラウンドを1位、1位、2位で終了。ぱっと見上出来も上出来だが、この「4Rだけ2位」という結果でのちに苦しみを味わうことになる。

後編に続きます。